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洋画低調の仮説は、「アメリカでメガヒットする映画にコメディが多く、日本では当たらないもしくは公開さえしないことが多い。これが最大の原因なのではないか」。
そもそも洋画は低調なのか?という話があるのでまず前提から。
・日本における洋画興収は、2002年をピークに、3年連続で減少中。
・米国の興収は2004年に最高となったが2005年は大きく減少。
・日本の興収計も2004年に最高となったが2005年は減少。但し邦画興収は2002年以降は順調に増加中、2001年に「千と千尋の神隠し」効果で記録した史上最高数字も2005年に更新。
洋画の減少を邦画で穴埋めしている、というのが現状です。
これをふまえて。まず、米国興収1億ドル以上のメガヒット作品数を追ってみました。
2000年〜22→20→24→29→24→19
なお2006年は現時点で12本。クリスマスシーズンの作品次第で20本超もありえないことではありません(公開開始日により割り振った本数となっています)。2003年がピークでしたが、他の年はほぼ変わらないと見るべきでしょうか。
では、このメガヒット作品の、日本での興行成績は?日本での興収が公称10億円に満たなかった作品(映連リストに掲載のない作品)数は次の通り。
2000年〜12→5→5→15→5→7
メガヒットの多かった2003年はしかし日本でヒットしなかった作品が多く貢献度としては寧ろ前年を下回っていました。昨年2005年はメガヒットの本数に比べて10億円未満の本数は増えていますが、2000年に比べると改善されているとはいえます。
さて、この内容は?というと、殆どがコメディです。あとはアメコミ原作ものが加わるという感じですが、ほぼコメディ。出演者をみると、Will Ferrell、Adam Sandler、Vince Vaughn、Jim Carrey、Ben Stiller、Steve Martin、Eddie Murphyといった名前があがります。アメリカにおけるマネーメイキングスターであるコメディアン(もしくはReese Witherspoonのようなコメディエンヌ)が、日本ではバリューを発揮しない、アメリカローカルのスターであるという結果となっています。まぁスターのせいというより、コメディだから、というほうが、ウィル・スミスの「最後の恋のはじめ方」と「アイ、ロボット」の関係からして適切かもしれませんが。
このあたりが念頭にあったので冒頭の仮説を考えたわけですが、一方、日本の興収上位に目を向けるとこんな感じ。
日本で興収20億円以上をあげた作品の数は次の通り。ちなみに映連資料は二年にまたがって共に掲載されている作品が稀にあるのですが、それはそのままカウントしているので多少問題があることを付記しておきます。まぁあっても年に1本2本の話ですが。
2000年〜13→23→26→28→23→28
2001年以降は23〜28本のレンジで推移しています。
このうち、米国でメガヒット(1億ドル以上)を達成している作品数を抜き出すとこのように。
2000年〜6→8→14→14→11→8
2002年をピークに、2003年は横這いながら以降減少。但し、2006年はどうやら現時点で10本を記録している様子で、歯止めがかかったといえなくもない状況にはなっています。とはいえ、アメリカでメガヒット自体が少なくなるのであれば、この本数は当然伸びようがなくなるという関係にあります。
一方、アメリカでメガヒットではないが、日本で20億円以上をあげている洋画は次の通り。
2000年〜2→6→5→7→4→7
2001年以降健闘しているが、しかし2006年は現時点でどうやらゼロの様子。さらに、この上記のうち、アジア圏映画の本数は、
2000年〜0→0→1→1→1→3
であり、前年の増加は韓国映画に支えられての本数でした。この効果が今年は抜け落ちています。
なお残りは邦画で、興収20億円以上の邦画の本数は、
2000年〜5→9→7→7→8→13
となっています。2006年は現時点で10本はある様子。
上記を見ると、
・米国でメガヒット作品が減る
・米国でメガヒットした作品のうち、日本で通用しない作品が増える
・米国でメガヒットに届かなかった作品で、日本でヒットする作品が減る
という事態が生じており、かつこれが複合的に起こりつつあるのではないでしょうか。2006年の状況を見れば、最大の問題は、「米国でメガヒットしなかった洋画が日本でヒットしなくなった」ということにあるように見えます。
なお、米国でメガではないが日本では20億円以上、という作品の傾向は、「スタームービー」。加えて、監督や賞、話題性でヒットする場合もありますが、日本は「従来からのネームバリュー、ブランド力」がより強く、アメリカではさほどではない、という状況が見えます。これは、日本の配給や興行サイドあるいはマスコミが、何もしなくても売れる名前を重視した結果だったのかもしれません。これが2006年現在うまく回っておらず、また今後もそういう傾向が続くのだとすれば、すわネット効果かマスコミがマスでなくなるのか、みたいな話が一番キャッチーですが、実際は、シネコンの普及による効率的な上映というところに落ち着くのかなと思います。
ということで、その傍証として、日本における興収10億円以上の作品数をあげます。
2000年〜48→45→48→47→51→65
2005年は数字が急増しています。邦・洋の区別では、
邦画2000年〜18→15→17→18→20→26
洋画2000年〜30→30→31→29→31→39
と実は洋画も増加。10億円〜20億円という裾野は広がり、ヒット作自体は増えたが、そのなかには従来なら20億円以上を狙えた作品も含まれ、洋画全体の興収は減少という調整段階に入っている、ということなのでしょう。そしてその洋画の穴を邦画が見事に埋めている。そういう状況になっています。
今後の日本洋画界で大ヒットするには、アジア圏の映画に期待できず他の地域も望み薄という状況になりつつあるため、アメリカで日本でも通用するアクション・サスペンス系のスターが出現することを待つしかない、という状況になっています。現在のスターは、トム・クルーズ、トム・ハンクス、ジョニー・デップ。あとはスピルバーグ、タランティーノ、ピクサー、ディズニー、キアヌ・リーブス、アメリカ外ではリュック・ベッソン、ペ・ヨンジュンというところがブランドネームですが、この辺で打ち止めかな、ということになると、正直厳しいところ。シリーズものがそのブランド力で稼ぐ、というのもありますが、「ハリー・ポッター」と「007」に「ナルニア国」が追加される程度。作品の減少がどうも避けられない状況で、そうなると洋画の縮小はもうしばらく続くようです。
なお、邦画のヒット作の共通点は、というと、正直よくわかりません。日本で受ける要素としては、「ブランド力」のほかに、「感動もの」「based on a true story=実話もの」というポイントがあげられますが、個別のヒット作にはそれぞれの仕掛けがあり、また仕掛けてもヒットしない作品もあるため、勝利の方程式というのは明確にはないような気がします。東宝でもテレビ局でもダメなものはあるので。ま、ダメっていうほどのはずれではないので、大はずししない方程式はありそうですが。リスクヘッジに方程式があるのは当然。一方でヒットに方程式がないのは、それは型主導にならずに済むという点で、良いことだとは思います。
つまり、洋画の配給会社を、米メイジャー系洋画配給会社(UIP、WB、FOX、SPE、BVなど)と日本資本洋画配給会社をわけてみた場合、と日本資本洋画配給会社が配給する作品の中には、ときとして大化けしてしまうものもあるのかな、とも思いました。
たとえば、ギャガの洋画配給作品は、今は大きな資本力をもっていますが、以前から、「よくこんな掘り出し物を見つけきて、買い付けたな」、などと個人的に思うことはありました。そして、たまに大化けしてしまう作品もあります。
松竹も洋画の配給に関して、今年の上半期は不振だったようですが、興行網を持っているので、「掘り出し物」を見つけてヒットする作品の可能性も、まったくないとは言い切れないと思います。
要は、世界中には本国ではヒットしなかったものでも、日本の洋画配給会社が買い付けた「掘り出し物」の作品が、日本ではヒットすることが、あり得るのかな、と思った次第です。
でも、日本資本の洋画配給会社の「掘り出し物」の作品がヒットすることは、何かの仕掛けなどをしなければ、当面は、多くなることは考えにくいと思いました。将来はどうなっているかわかりませんが・・・。
ただ、アメリカから買い付けた作品がヒットするか、という点では、ちょっと厳しいかな、と思います。アメリカのヒット規模に応じて値段が変わるのであれば、日本ローカルでなら充分いける作品がやすく変える可能性もまだありますが、アメリカの公開前、どころか準備段階で買わなければいけないとなると、そのときのネームバリューで値付けすることになりますし。
掘り出しものも、たとえば「ホテル・ルワンダ」のように、高値をつけて売られたものを、値が下がるまで待とうとしたら、上映要望運動が起こってしまう。これが常態化したら、高値づかみが起こるわけで値がつり上がってしまう。
韓国ものも、ヒットが続いたので値が上がり、一方でヒット規模は急速にしぼんでしまった。
興行だけでなく二次三次の使用で儲ける、というのは原権利者でないと無理で、配給権を買っているだけの立場では旨みにありつけない。値を積んで日本での全権利を買うか、出資から絡むか。いずれにしても値が張る。
まぁそれは興行でヒットするかどうかとは別の話ですが、配給するだけでは利益が出なくなるというのは、どうしてもある話。で、出資製作で権利を持つ側が一番強い、コンテンツホルダーになろう、という話になる。しかし、出資にはリスクも大きい。じゃあどうする。権利を分散して複数会社でもてばリスクヘッジになるだろう。でもそうなると当然損失は限定的だが利益があがっても大きくなかったりする。二次以降の権利でややこしい事態も起きる。最大の問題は、リスクの高い作品が作られなくなること。これがいまのアメリカの状況で、全出資者がOKするとなると、安全な企画しか通らなくなるということになり、さすがにそれは消費者という生ものにはどこかで飽きられる。ということで、少数出資者がニッチを狙った作品が当たったりする。で、それは最初は少額なのだが、そのうち出資額が積み上がり、リスクが大きくなって、かつての成功者が破綻に陥る。で、振り出しに戻る。
そういうループは歴史の常でして。どこでどうバランスをとるか、なんですが、結局は新しいプレイヤーが入ってきて血の入れ替えをするほかないんでしょう。